生チョコを作りました。
人生初です。
しかも、デンマークで、です。
まさかデンマークで、それも人生で初めての生チョコ作りを体験するなんて、まったく思っていませんでした。
なぜ生チョコを作ることになったのか。
理由は単純で、食べたくなったから。
そして、作り方が知りたかったから。
細かく刻んだチョコと生クリーム、そしてバターを温めながら混ぜ、冷蔵庫で固めて・・・
と、今日は生チョコの作り方について書きたいわけではありません。
生チョコ作りを通して考えたことがあるのです。
それは、「人生とワーホリ」について、です。
なぜ今まで生チョコを作らなかったのか?
「生チョコ」と「人生」と「ワーホリ」。
奇妙な組み合わせですよね。
僕は、生チョコを作りながら思ったのです。
「なんでデンマークで生チョコ作ってるんやろ?」と。
そして、そこから、
「いや、むしろ、なんで今まで作らへんかったんやろ?」
という疑問に変化しました。
もともとチョコレートが好きで、昔からよく食べていました。
普段は板チョコなんですが、たま〜に生チョコが食べたくなる時があって。
あの柔らかい独特の食感を求めて、時々コンビニへ駆け込んでいました。
「生チョコのこの食感はどうやって作ってるんやろ?難しいんかな?」
食べながらそんな風に思ったことはありました。
でも、作り方を調べることも、もちろん自分で作ることもせず、結局ただ食べるだけ。
なんとなく、生チョコの作り方を調べたり作ったりする時間が勿体ないと考えていたのだと思います。
平日は朝から晩まで、時には休みの日も仕事をする生活だった僕にとって、「生チョコの作り方」を調べることは、そんな扱いでした。
「ちょっと興味があること」に手が届くデンマーク生活
そんな僕でしたが、30歳で会社を辞め、ワーホリビザを取得してデンマークへ。
フォルケホイスコーレという北欧独自の学校で1年間過ごしました。
フォルケホイスコーレでの生活は、午前にデンマーク語の授業、午後はスポーツやアウトドアなどの選択授業、そして15時以降はフリータイム、というのが基本的な平日の流れ。
さらに土日は休みです。
そう、めちゃくちゃいっぱい「自分の時間」があるのです。
「自分の時間」は、勉強をしたり、街へ行ったり、みんなでゆーっくり話しながらのんびり過ごしたり。
本当に自由に過ごしていたのですが、時間がタンマリあったので、「今まで興味はあったけど手をつけられていなかったこと」にも、どんどんチャレンジできました。
カヤックに挑戦したり、バトミントンをしたり、そして今回の生チョコ作りにトライしてみたり。
僕は今まで生チョコの作り方を知らなかったのですが、じぶんで作ってみたことで、体で覚えることができました。
「難しいんちゃうかな?」と思っていたのですが、意外と簡単でした。
これは、「自分の時間」が増えたから体験できて、「簡単」ということがわかったのです。
しかも、ただ簡単だということがわかっただけではなく、できることが1つ増えたのです。
僕はたぶん、ずっと日本にいてサラリーマンを続けていたら、生チョコを作ることはきっとなくて、生チョコの作り方を知らないまま一生を終えていたと思います。
それはやっぱり、毎日働いて、時間も体力もなかったからです。
いえ、厳密には自分の時間が全くなかったわけではありません。
なので、本当に興味があれば、チャレンジできていたと思いますが、僕の中の「生チョコレベル」のことは、完全に後回しにしてしまい、結局やらないまま終わっていました。
でも、デンマークへ行って、自分の時間をゆっくり取れたことで、「生チョコレベル」の「ちょっと興味のあること」にも、手を伸ばすことができたのでした。
いろんなことにチャレンジすることは、AIや機械によってたくさんの仕事が取って代わられるであろう今後、すごく大切になってくると思っています。
じぶんの「好き」とか「興味」を発見できて、それに時間を費やせて、機械には真似できない「オリジナルなじぶん」が作れるんじゃないかな。
好きなことに向き合う「熱」は、機械にはない人間味なんじゃないかな。
そんな風に思うからです。
難民としてデンマークへ来た親友との出会い
あともう一つ、「興味のあることにどんどんトライしていこう」と考え始めるきっかけになったことが。
それは、ある友人との出会いです。
その友人とは、同じフォルケホイスコーレに通っていた、ウガンダ出身の20歳の青年。
彼は、難民としてデンマークへ来ました。
デンマークに来る前、彼は母国ウガンダでゾッとする恐ろしい経験をしています。
治安の悪かった彼の地元では、強盗が多発。
彼の家もその被害にあい、ある日突然、銃を持った男が押し入ってきたそうです。
彼は銃で脅されたものの、男の目を盗んで逃走を試みます。
そんな彼に向けて、男が発砲。
幸いなことに銃弾は当たらず、彼は何とか逃げ切ることに成功しましたが、そのとき放たれた銃弾は、彼の耳元をかすめていったらしいです。
彼はその体験がトラウマになり、以前よりも、勉強などの物事に集中できなくなったと言います。
さらに、当時の状況が脳裏をよぎり、眠れない日が今もあるそうです。
そのあと彼は、家族と共に母国を去り、異国の地デンマークへ。
右も左もわからない場所での生活が始まったわけです。
想像しただけでも、彼の人生がどれだけ大変なのか、理解できます。
でも、そんな彼は、とても前向きに生きているんです。
フォルケホイスコーレの寮で一緒に生活していた半年間、彼は常に新しいことにトライしていました。
スピーカーを1から組み立ててみたり、曲を作ってみたり。
彼はいつも、「興味のあることには全部チャレンジしてみるんだ」と、目を輝かせて言っていました。
そんな彼を見ていると、今まであれやこれやと言い訳して自分の興味から目を背けていた自分が情けなくなったし、できるのにチャレンジしていなかった時間が勿体無いと感じました。
これからは好きなことにどんどんチャレンジしていきたい。
彼との出会いを通じて、僕のマインドはそんな風に変化したのでした。
彼をはじめ、デンマークではたくさんの出会いがありました。
難民の人と一緒に生活するなんて、親友になるなんて、日本ではきっと経験できなかったこと。
あまりにも自分と違うから、これまで出会って来た人たちと大きく違うから、だからこそ、感じることや学べることが、めちゃくちゃ大きい。
そんな出会いこそが、海外留学の一番の醍醐味だと僕は思います。
自分の「好き」が誰かの「何か」になる体験
生チョコ作りやウガンダの彼との出会いを通して、僕は去年1年間、実際に好きなことに打ち込んでみました。
その一つが、このブログです。
僕はフォルケホイスコーレでの生活のことを、このブログで毎日書き続けました。
しんどい時もありましたが、次第に、文章を書くことが好きだということに気付いていったのです。
そして書き続けていると、少しずつ読んでくださる方が増え、中には、「デンマークへの留学を決めるきっかけになった」「人生が変わった」と言ってくださった方もいました。
これには驚いたし、そして、心の底から嬉しかったです。
自分の好きなことが、誰かの人生を動かすきっかけになるなんて。
本当にびっくりしました。
でもそれは、やっぱり「文章を書くこと」が「自分の好きなこと」だったから、書く文章一つひとつに自然と想いがこもっていたんじゃないかな。
そう思っています。
そんな経験をした僕は今、ライターの仕事をしています。
デンマークで気付いたじぶんの「好き」が、仕事につながったのです。
1年前のじぶんには、今の姿は想像できなかった。
「何が起こるかわからへんな」、と思うのと同時に、「好きなこと」や「興味」と素直に向き合うことの大切さを、実感しているのでした。
一度立ち止まってもいい
デンマークに行って、そしてたくさんの出会いと経験を与えてくれたフォルケホイスコーレで生活できて、本当に良かったと思っています。
もちろん、サラリーマンをしていたときも、いろんなことを学べました。
でも、「ちょっと興味があって、してみたいこと」には手が届かなかった。
そして、そんな生活が続いていくうちに、どこか人間味が失われていたような気がします。
いろんな生き方があって良いと思うから、もちろんサラリーマンとして生活することも素敵だと思います。
でも、ワーホリや海外留学を通して、一度立ち止まってゆーっくりする時間を持つことが必要な人もたくさんいるんじゃないかな。
ぼくは、生チョコを作りながら、そんなことを思いました。
別に一度立ち止まったからって、死ぬわけじゃない。
むしろ、今まで気付けていなかった自分に出会えたり、素敵な人たちと繋がれたり、新しいことに触れることができたり。
「一生」で考えるとプラスになり、じぶんへの栄養になることもたくさんあるんじゃないかな。
そんなことを考えるきっかけをくれたのが、生チョコ作りだったのでした。
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