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インタビュー

【インタビュー】受験をやめて、デンマークへ。矢元くんに聞きました

カルーホイスコーレのインタビュー、第五弾!

今回は、高校卒業後、18歳という若さでデンマークに来た矢元正紘(やもとまさひろ)くんです。

彼は高校3年生のときに受験勉強をしてたんですが、それを途中でやめてデンマークに来たと言うんです。

そんな彼に、こんなことを聞いてみました。

  • なんで受験勉強をやめたのか
  • どうしてデンマークに来たのか
  • 今後どういう生き方をしたいのか

これから大学へ行こうとしている人に、特に読んでもらいたい内容です。

それではどうぞ!

大学受験をやめた 「何のために大学に?」

インタビュー中のまさ君「大学受験をやめた」Photo by Saori Kojima

ー なんで途中で受験勉強をやめたの?

まさくん:中学生のときから、「大学に行く」っていうのが当たり前のように自分の中にあって。理由はわからないけど、自分の道にそういうレールが敷かれていて、それ以外は選択肢がなかったというか。

それで7月に部活が終わってから本格的に大学受験の勉強を始めたんですけど、ふと、「何のために受験勉強してるんだろう?」「なんで大学に行くんだろう?」って思ってしまって。

学校の先生に志望校を提出したんですけど、何かやりたいことがあってその大学を選んだわけじゃなくて、消去法で絞っていったんですよ。

志望理由を書くときも、自分を騙すような感じで、いい面を頑張って探して。「これが自分のやりたいことだ」って偽って、無理矢理決めた感じがありました。たぶんそのせいで、途中で大学受験に対して疑問に思ってしまったんです。

 

ー 疑問に思ってから、すぐに受験勉強をストップしたの?

まさくん:そんな疑問を感じてから、大学ではどんな勉強をするのか、大学を卒業したあとにはどんな進路先があるのか、詳しく調べてみたんです。改めて調べてみると、「え、こんなことするの?」って思ってしまって。

そこからもう一度、「僕が今やりたいこと、やるべきことはなんだろう」って考えたら、もっといろんな知識をつけて、自分の感性を磨くことだなと思ったんです。

つまり、いろんなことに挑戦する時間が必要だと思ったんですけど、最初に志望していた建築学部は忙しい。大学に行きながらも時間が取れそうだと思ったのが経営学部だったので、まずは志望先を変更しようと考えました。

でもそれを母親に話すと、「別に経営がやりたいわけじゃないのに大学へ行く必要はないんじゃない?」って言われて。確かに、時間もお金ももったいないし、モチベーションも続かないと思いました。

そこから、「じゃあ自分が本当にやりたいこと、やるべきことをするにはどうすべきか」っていうのをより深く考え始めて、受験勉強をやめました。

 

ー じゃあご両親は受験をやめることに反対してなかったんやね?

まさくん:母は、「あなたのやりたいように」っていう感じです。でも父には、「まだこの時代、大学に行かないと大変だから大学は行きなさい」って、今も言われます。

 

ー お父さんのその意見についてはどう思う?

まさくん:自分の中でまだ考えが固まってないけど、大卒の肩書きのために大学へ行くのはちがうって思っています。

 

ー 受験勉強をやめてデンマーク留学を決めたことに対して、周りの友達はどんな反応やった?

まさくん:反対意見はなく、周りの反応はポジディブでした。「デンマークに行くの、すごいね」っていう感じ。でも僕は、「まだ何もやってないし、決めただけだし、何にもすごくない」って心の中では思ってました。

 

ー 受験勉強をやめることに、怖さは全くなかった?

まさくん:もちろんありました。お先真っ暗だから(笑)

だけど、そのまま周りに流されて、自分の考えを持たないで受験することに対する不安もあった。もちろん、一部の人は自分の考えを持って大学へ行くけど、進学する理由がはっきりしていない人も一定数いて。自分はその中にいたくなかった。そこから抜け出して、「僕は僕なんだ」っていうのを示したくて、こっちの道を選んだのかもしれない。

 

ー 受験をやめたことに対して、今はどう思う?

まさくん:めちゃくちゃよかったです。間違いではなかった。いろんなものに触れることができました。例えば、興味を持っていた歴史や政治について勉強したり、食品添加物をはじめ、健康や食に関していろいろ調べたり。そういう時間を持てたのは大きいですね。

 

ー 受験をやめてからデンマークに来るまでの間は何してたの?

まさくん:高校を卒業してからここに来るまでの間、漁港でアルバイトをしていました。朝5時過ぎから丸1日仕事をする、かなりハードな職場でした。

そこでの経験も大きかった。漁港の仕事って、第一次産業で、食に関わる大切なものじゃないですか。そこで働く人たちと一緒に仕事をしてみて、「自分はこの人たちのおかげで生活できている」っていうことを知れたのが大きかった。あの経験がなかったら、今の僕の考え方とはまた別のものになってたと思う。

 

ー それを知れたことで、自分の中でどんな変化があったの?

まさくん:今までは自分のやりたいことを探してたんですよ。でもそれじゃダメだなって思うようになって。自分だけが満足してる人生じゃもったいない、それじゃダメだ、と思いました。いろんな人がいて、僕が生きてられる。だから僕も何か返さないといけないというか。いろんな人に恩返しじゃないけど、返さないといけないと思った。

 

デンマークを選んだ理由 「いろんなことに触れたい」

インタビュー中のまさ君「デンマークに来た理由」Photo by Saori Kojima

ー 大学へ行く理由がわからなくなって受験をやめたってことやけど、なんでそのあとデンマークに来たの?

まさくん:大学受験に疑問を抱いてから、いろいろ考えていたときに、昔から漠然と憧れていた留学のことが頭に浮かんで。そこから留学先を調べていたらデンマークにたどり着いたという感じです。

 

ー なんで他の国ではなく、デンマーク?

まさくん:僕の場合、「絶対デンマークじゃなきゃダメ」っていう理由はありませんでした。でも、金銭面は少し関係しています。学費が比較的安いところを調べてたら、フォルケホイスコーレ(※)が出てきたんです。

※フォルケホイスコーレ・・・北欧独自の学校。詳しいことは、試験も成績もない学校「フォルケホイスコーレ」はこんなところ。にまとめています。

フォルケホイスコーレの概念が、「人生について学ぶ」ことだと知って、「ここに行きたい」って思って。

そのとき僕がやりたかったのは、「いろんなことに触れたい」「自分で考える時間を取りたい」ってことだったので、直感的に「自分が求めている環境はここだ」っていう感じでした。

 

ー フォルケホイスコーレにはいろんな学校があるけど、なんでカルーホイスコーレに?

まさくん:1つは、デンマークという国のことを知りたいって思ったこと。どうせ行くなら、その国についての知識を得たいというか。最初は、アウトドアやスポーツがメインの学校に行くつもりで調べていたんですけど、それだけじゃもったいないっていう気持ちが出てきたんです。

あと、デンマーク語を一から学べるっていうのも、大きかったと思う。それと、選択授業でアウトドアが取れるということも理由のひとつだった。

 

ー 実際、カルーホイスコーレに入学して1ヵ月ぐらい経ったと思うけど、カルー生活はどうですか?

まさくん:めちゃめちゃ居心地がいいです。

時間の流れがゆっくり。自然が近いっていうのが大きいですね。海があって、森が近くて、焚き火するところがあって。めちゃめちゃいいところです。

 

ー カルーホイスコーレは、デンマーク語でデンマーク語を学ぶスタイル。実際、経験してみてどうですか?

まさくん:最初はホントにチンプンカンプン。何にもわからなくて。でも、いつの間にかだんだんわかるようになってきた。アフマドの話も、最初マジで言ってることがわからなかった。でもなんか、最近は言ってることがなんとなくわかるようになってきちゃった。不思議。

 

ー カルーホイスコーレの悪いところって何かある?

まさくん:居心地が良すぎるところ。一時期、「次のセメスターもここに残って、デンマークの大学に進むのも面白いかも」って思ってたけど、やめました。

やめた理由の1つに、僕の性格上、ここで勉強してると成長できないっていうのがある。ここの環境は良すぎて、僕は甘えちゃうっていうか。時間を無駄にしそうで、それが怖いんです。

 

ー 勉強面でいうと、カルーは自分にとってあんまりよくない?

まさくん:デンマーク語自体はすごい伸びるけど、僕は「もっと荒波に揉まれたい、成長しないといけない」っていう気持ちがあって。具体的ではないけど、僕はもっといろんな経験をしたい、いろんなものに触れたい、という思いがある。

カルーホイスコーレが悪いってわけではなくて、他の環境も求めているって感じです。

ホントにここはいいところ。ゆっくりしたいと思えば、ちょっと散歩して海に行ける。勉強しようと思えばできる。なんでもできる環境です。カルーは良すぎて、悪い。

 

ー 日本人が多いことについてはどう思う?

まさくん:メリットもデメリットもある。

日本人が多いということも、居心地が良すぎる理由の1つかもしれない。自分はそんなに勇気がある方じゃないから、デンマーク人の輪の中に入っていくにもエネルギーが必要で。でも、日本人がいるとそれをしなくても生活できちゃうっていうのが、ちょっともったいないっていうか。日本人がいなかったら、やるしかないじゃないですか。だからそういう環境を求めている。この若い時期に経験しておきたい。

でも、日本人が多くて、良いこともたくさんある。日本人でも、みんな全然バックグラウンドが違う。やってることも考え方も違う。日本にそのままいたら出会えないような人たちがここにはたくさんいる。だから、その人たちに出会えて、いろんな話ができるのが面白い。

 

これからのプラン 「知識や専門性を得に大学へ行く」

インタビュー中のまさ君「大学へ行く」Photo by Saori Kojima

ー これからのプランは何か考えてる?

まさくん:とりあえず日本に帰ることは決めてます。日本の大学に入って、休学や交換留学で海外に行きたい。

海外に行きたい理由は、自分の意見を論理立てて人に話すっていう環境を求めているから。ここの学校には、みんなでディスカッションする授業がある。そこではデンマーク人をはじめ、いろんな国の人が自分の意見を言っていて。イランやネパールのような英語圏じゃない国から来ている生徒もみんな英語でディスカッションできている。そういう環境に飛び込みたいっていう気持ちがあります。

 

ー 受験を一度やめたけど、大学には行こうと思ってるんやね。

まさくん:今は、自分の武器や専門性を得たいという気持ちがあって。今の自分には何もないから、それを得るために大学には行きたいと思っています。

 

ー なんでそう思ったんやろ?

まさくん:今の世の中は、便利を求めて、それに対するリスクに関心を持ってない気がして。

このままではまずいと思って色々発信しようと思ったけど、自分には自分の考えを裏付ける証拠もないし発信力もない。信頼される証もない。高校卒業しただけの人間がそんなことを言っても信用してもらえないっていうところがあって。そういうものを得るためにも、大学で勉強したい。

今は、化学薬品が人体に及ぼす影響や、遺伝子組み換えの危険性などについて、勉強したいと思ってます。

 

ー なるほど。今は大学に行く理由がはっきりしたんやね。

まさくん:この生を受けたのなら、やらなきゃいけないことが何かあるはずだと思うんですよ。だから、今の考えとしては、自分のやりたいことを突き詰めるんじゃなくて、僕のやらなきゃいけないことを探してる感じです。

自分の使命みたいなものを何か求めてるのかもしれない。でも、それを成し遂げるためには、自分にはまだまだいろんなモノが必要。知識もそうだし、行動力もそう。もしかしたら、英会話も必要かもしれない。だから、その準備期間が必要で、今は大学に行こうかなって考えています。

 

まとめ

矢元正紘くんへのインタビュー、いかがでしたか?

僕が彼にインタビューしたいと思った理由は、もっと多様な選択を受け入れる社会になってほしいと思っているからです。

まだまだ学歴を重視している会社が多く残っている今の日本に、僕は疑問を感じています。「とりあえず大学には行かないといけない」という風潮によって、目的を持たず、なんとなく大学に入っている人が多い。そしてそれによって、たくさんの個性がそこでストップしてしまっている側面があるんじゃないかなと思ってるんです。

もちろん、周りを気にせず、好きな道に進めばいいんでしょうけど、彼も言っていましたが、周りの友達のほぼ全員が大学に行くという中で、自分だけ別の選択をするというのは、怖さがありますよね。自分が彼と同じ年齢のころは、絶対その選択はできなかったです。

それでも、疑問を疑問のまま放置せずに方向転換した彼の決断は、本当に勇気ある行動で、これからの彼の人生の大きな自信になるんだろうなと思います。こういう選択ができる人が増えていけば、社会も少しずつ変わっていく気がします。

「自分のやりたいことを突き詰めるんじゃなくて、僕のやらなきゃいけないことを探してる」という矢元くん。これからどんな道に進んで行くのか、楽しみで仕方がありません。今のスタンスのまま、彼が思うように進んでいってほしいなと思います。

というわけで今回は、大学受験を途中でやめてデンマーク留学に来た矢元正紘くんへのインタビューをお届けしました。

https://elutas.com/interview-kayoko-6887.html